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睡眠と太陽とおいしいごはんがあればそれでしあわせ。ときどき本や映画の話。

【宇都宮】地下30m・東京ドーム1個分の巨大空間!|大谷資料館に行ってきたよ

ひょんなことから in 宇都宮。モーニングを終えて向かったのは大谷資料館

大谷資料館とは

地下30mに広がる大谷石(おおやいし)の元採石場を一般公開している施設。大谷石は、コンクリートのような見た目をしている軽石凝灰岩の石材で、柔らかく加工がしやすいことから古くから外壁や土蔵などの建材として使用されてきたそう。フランクロイドライト設計の、旧帝国ホテル本館にも用いられていて、これがもうとってもかっこいい。※現在は愛知県犬山の明治村に玄関部分のみ移築されている。

行ってみよう

JR宇都宮駅6番バス乗り場から立岩行きに乗車して30分(片道450円)。「資料館入口」で下車して歩くこと10分。アプローチの向こうにガラス張りの建物が見えてくる。入場料は700円、ばっちり防寒をして地下への扉をいざゆかん。

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ダンジョンのような階段。わくわくする。

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入口脇。この部分は石の耐久性を確かめる実験場。

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その広さは2万平方(140m×150m)。平均気温は8度前後、夏でもひんやり涼しいので入口にあるブランケットで温度調節をする必要あり。その涼しさから、戦時中は政府米の貯蔵庫としてお米を預かっていたそう。

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江戸時代中期から昭和34年頃までは手掘りで採石していた。1本の石を掘るのに4000回ツルハシを振ったそう。機械化が進んでからは1人あたり1日50本加工できるようになったとはいえ、これだけの広さを掘り進めたのかと思うと人間てすごい。

さまざまな用途で使われている

みてわかる通り、フォトジェニックなこの施設。映画やMVなどのロケ地としても多数使われていて館内にその資料もたくさんあるのだけど、そのなかでも群を抜いてかっこよかったのがOMEGAのレセプションパーティ。ライティングもよく映えるし、音の反響もいいので、今後もさまざまな活用が期待できそう。

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とはいえ、安易なイルミネーションや館内に掲示されている撮影実績の数々は、もう少し見せ方あるのではないかと思わずにはいられなかった。利用されて箔がつく側面はもちろんあるのだろうが、なんとなくミーハー色が出てしまってちょっと残念。場所自体に力があるだけにどんと構えてほしいと思うのは来場者の勝手だろうか。

まちを歩くのもたのしい

そういえばバスが資料館に近づくに連れて、石造りの家や蔵をたくさん見た。レンガでもコンクリートでも木造でもなくて、石造り。出窓やドアの装飾もひとつひとつ異なっていて見飽きない。バスの本数が少ないので建物を眺めながら次のバス停まで歩いた。

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大谷資料館

321-0345 栃木県宇都宮市大谷町909
028-652-1232 9:00〜17:00 (最終入館は16:30まで)
年中無休 ※但し、12月29日~1月1日は閉館
大人:700円 子供:350円(小・中学生) 
http://www.oya909.co.jp/

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【宇都宮】無料WIFIが使える伝統的な喫茶店「ブラジルコーヒー」でモーニング

コーヒーがあまり飲めないのですが、喫茶店はすきです。あとコーヒーを入れる仕草とか、香りとか、それにまつわる出来事には心躍ります。でも飲むと目が回るのだよね。

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宇都宮美術館の館外プロジェクト「おじさんの顏が空に浮かぶ日」が観たい!観たい!とわめいていたところ、栃木までゴルフに行く兄が乗せてきてくれました。というわけで私はいま宇都宮。

だけど肝心のイベントは、前日からの天候不良が予測されていたため21日(日)延期になったのだそう(朝5時に起きて知った、無念)。ぽっかり時間が空いたのでとりあえずモーニングを食べることにしたよ。

JR宇都宮駅前のブラジルコーヒー商会にて。タイトルにある”無料WIFIが使える伝統的な喫茶店”てどうなのよって思うけど、これはれっきとしたブラジルコーヒー商会ホームページに使われているコピーなのだ。無料WIFIのおかげで快適にブログが書けている。なんやかんやでやるべきことがあった私は栃木まできてパソコンをいじっている。

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無料WIFIにアクセス。喫茶店、という感じだ。いいね。

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正しいモーニング667円+税。『生まれた時からアルデンテ』を読むと純喫茶に行きたくなる。

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電源も使えると書いてあったのでこれは頼もしいと入店してみたら、いたるところに延長コードが転がっていた。斬新!

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朝からビールが飲めるそうです。

このブログを読んで、県庁前店に行きたかったのだけどどういうわけかシャッターが閉まっていた。でも駅前店も広くて心地良かったよ。

ブラジルコーヒー商会 JR宇都宮駅前店

028-622-3708
栃木県宇都宮市駅前通り1丁目5-6
7:00~23:00 無休
朝食営業、ランチ営業 


行きたかった〜。明日は飛ぶといいね!


私はこれからここへ行こうかと思う。小学生のとき学校の授業で行ったきり。

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【本】旅とモノの話『世界中で迷子になって』

角田光代さんのエッセイを読んだよ。

世界中で迷子になって

世界中で迷子になって

 

この頃とても思うのだけど、私はお金を使うことに慣れていない。なんというか、思いっきりの良さがないのだ。生まれて27年、これまでに買った一番高いものはパソコン(15万円)か。といってもこれは必要経費だし、ないと仕事にならないからしょうがない。旅行は好きだけど、贅沢旅行をするつもりはないから国内旅の予算は現地滞在費も含めてだいたい3万前後になる。深夜バスもいとわないし、鈍行を乗り継いでいく旅も好きだ。海外の場合は航空券だけで結構な額になるけれど、必ずしもベストシーズンに動くわけじゃないから大抵はそんなに高くない。現地でのアクティビティにお金を落とすでもなく、大きな買い物をするでもなく、普通もしくは現地の人がいくようなお店で食事をし、ふらっと美術館に行き、自然豊かな場所でリフレッシュして帰ってくる。

かたや同年代でちらほら聞こえてくるのは「家を買った」という話。そこまでいかなくても、「車を買った」や「ゴルフ一式買った」という話を聞くたびに、そのお金の捻出処に対してというよりも、それを買うという決断したことに賞賛を覚える。私の場合、ネットショッピングをするときだって、たとえ値段が数百円であったとしても、ポチっとするそのワンクリックまでに「えいや」の決断が必要だったりするからだ。

私がお金を使うことに対して抵抗が少ないのは、それが「体験」だったり「モノの値段にあっている」場合だと思う。全く持ってお金を使いたくないわけではなくて、どうせ使うのであれば楽しいこと、体感できること、おいしいもの、いい材を使っているもの、手間がかかっているもの、そういうものに使いたい。年相応についてはよくわからないけど、「下品なお金の使い方」はしたくないなと思っている。

前置きがとっても長くなったが、角田さんのエッセイにはよくモノとお金の話が出てくる。そしてそれは買った品物がいかに素晴らしかったか、高いものはいいものだ、という類いのものではなく、お金を使うことに対して葛藤している瞬間が描かれていることが多い。お弁当をつくることにして買ったお弁当箱は、すぐにやめてしまう500円のものではなく、かといっていつ辞めるかもわからないのに6000円は出せず、少し緊張感があって愛着も持てる2000円のものを購入したという話だとか、ボクシングを辞めないがために7000円のグローブを買ったという話だとか、お金がある・ないという次元ではなく、買うということに対しての葛藤がそこにはある。そこに人間味(親近感?)を感じずにはいられない。あります、あります、角田さんでもそうなんですね、という勝手な安心感も含む。

この本は、『旅に思う』と『モノに思う』の二章で展開されている。旅好きなことはもちろん伝わってくるのだが、それ以上にモノ編への熱量がある。一編一編は短いので眠る前とかに少しずつ読み進めるのにぴったりな一冊。名久井直子さん×danny さんによる装幀がとってもよい。

しあわせのねだん (新潮文庫)

しあわせのねだん (新潮文庫)

 

 角田さんとお金の話はこの本でも。精神状態がおかしなときは、思いもよらぬ買い物をしてしまうという話、読んだのは7年ぐらい前だけど今でも鮮明に覚えている。

 

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【気になる】P to P Store -47都道府県の地域問題から生まれた製品-@d47 MUESUMへ行ってきたよ

渋谷ヒカリエ8F、d47 MUSEUMで開催中の『P to P STORE』へ行ってきたよ。 

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今回の展示は、47都道府県の地域問題から生まれた製品を取り上げたもの。伝統工芸・伝統技術が県外に知られていない問題を今風にリデザインして解決した製品や、雇用が減少するなかで地域の雇用を生み出すことに成功した製品などが並んでいる。問題の種類は「農業/伝統工芸/自然環境/地場産業/雇用」の5つ。このなかで特に多かった問題は、伝統工芸と地場産業。需要の低下、後継者不足、知名度の低さ、などなど抱えている問題は場所は違えどどこも割と共通しているのだなと思う。

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什器はお店スタイル。ここで並んでいる製品は、実際に触れて、購入することが可能。

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宮城県代表として、OCICAもあります。

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いいなあと思ったのは岐阜県美濃和紙「かみみの」のOBAKE LIGHT

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奈良県吉野の間伐材を使った「PaPaCo YOSHINO」のきのかみ

いいなあと思うものは多々あれど、二番煎じじゃおもしろくない。ニッチで、でもニーズがある部分をそっと押せるようなそういう発想がほしい。展示は2月なかばまで開催、写真撮影もご自由にとのことでした〜。

(全部の製品に値札が貼ってあって、裏方設営の努力を垣間みました)

P to P STORE Problem to Product Exhibition Store
-47都道府県の地域問題から生まれた製品-

会期:2014年12月13日(土) - 2015年2月15日(日)
時間:11:00 - 20:00入場は19:30まで
   ※12月31日閉館18:00(入場は17:30まで)※1月1日休み
場所:d47 MUSEUM 入場無料/事前申込不要

 

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【本】明日は我が身、他人ごととも思い切れない|失職女子。

Twitterで流れてきた『失職女子。』を読んだよ。

明日はあなたかも!
100社連続不採用、貯金ゼロ。
ホームレスになるかもしれない…。
生きるための選択肢は、借金か風俗か自死か、行政に頼るか。
能力もキャリアもあり、働く意思も強い女性がなぜそこまで追い詰められたのか!
働きたいのに、働けない。
そんなときあなたはどの道を選びますか?
でも私は、生きていたいと必死に生きる現役の生活保護受給女子による貧困のリアルと、サバイバル術。
失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで

失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで

 

いやあ、他人事じゃないなと思った。

小山健さんのキャッチーなイラストと、どういうこと?っていう副題とで単純に「おもしろそう」と読みはじめたのだけど、読み終わったときに現れた感情は「危機感」とある種の「安心感」だった。たとえばなにか良くないことが起きたとき、気が動転してその結果ますますおかしな方向に走り出したりしてしまうことがある。でもそういう時に大切なのはまずは落ち着くこと、落ち着ける環境(本のなかの言葉を借りると「溜め」)を取り戻すことなのだろう。

可能性は限りなく少ないもしもであってほしいけれど、でも、もしも、なにかあったときには落ち着いてまずはこの本を取り出せばいい、と思える安心感を与えてくれた。もちろんなにもないのが一番ではあるけれど、必要とされている仕事よりも労働人口のほうが多いこのご時世、ないとも言い切れないなと。

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有事のときに、知識をつけようとする著者の向学心は見習いたい。これだけ向学心があって、文章力もあるのになぜ100社に採用されないのかと思わずもいられないが、かたやそういう現実もあるのだろう。

それにしても、30代が発するからこそリアルなんだけど、タイトルに「女子」ってつけちゃうのは見事な販売戦略だなあと思うし、少し騙された感。途中まで勝手に20代後半の女子の話だと思っていたよ。女子って何歳まで通用するんですかね。

 

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【アート】写真家・ホンマタカシの新作展『都市へ / TOWARDS THE CITY – camera obscura study -』@馬喰町

ここのところよく訪れている馬喰町(読めない地名上位だと思う。バクロチョウ)。繊維問屋としても知られるこの街は、近年小さなお店やギャラリーがぽつぽつとオープンしていて東東京のおしゃれスポットとしても知られている。

そんな馬喰町・アガタ竹澤ビル1Fと地下1FのギャラリーTARO NASUで開催中のホンマタカシの新作展『都市へ / TOWARDS THE CITY – camera obscura study -』を観てきたよ。

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白い壁が美しいアプローチ。黒い階段を下っていくと展示空間が広がっている。

「都市へ / TOWARDS THE CITY - camera obscura study - 」と名付けられた今回の新作展は、21_21 design sight「活動のデザイン」展を皮切りに、TARO NASU、CNACと開催時期と場所をずらしながら展開される一連のシリーズともいえる展覧会の第二弾となります。

東京にはじまりハワイ、ニューヨーク、遠くはインドまで、ホンマタカシの写真が紡ぐ都市をめぐる考察のうち、本展は東京とニューヨークを中心とした約10作品で構成されています。
それは、都市の一角、ホテルなどの高層建築物の一室をピンホール・カメラ化してとる写真、すなわちホンマ自身の言葉によれば「都市によって都市を撮影する」という試みでした。

クリップでとめただけのもの、アクリルを使ったもの、展示方法が斬新な展覧会だった。予定の合間に立ち寄っただけだったので駆け足でさらりと。

ギャラリーと同じビル、アガタ竹澤ビルには靴下やドイツ雑貨、ダイナーなど小さなお店がいくつか入っている。私は402号室のオランダ雑貨店deshimaさんがすき。

周辺にはカフェや雑貨屋さんもあるので散歩しながら楽しむことができる。問屋街で日曜休みのところも多いので行く前には開店情報のチェックをおすすめします。

一週間に3回の馬喰町行脚で出会ったイチョウの木。こうなったら散るところまで見届けたい。

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【本】これを持って旅をしたくなる|『手仕事の日本』

おもしろい本が、さくさく読み進められる本かというとそういうわけでもないと思う。なんだかんだでずっとカバンに忍ばせつづけた本を読み終わったよ。

手仕事の日本 (岩波文庫)

手仕事の日本 (岩波文庫)

 

この本は先日行った「カンタと刺し子」の会場、日本民藝館初代館長で民藝運動の父・柳宗悦が20年かけてめぐった、昭和10年前後の日本における手仕事を次世代に伝えるために書き記した一冊。

 

日本を地方ごとにわけて、柳審美眼で選りすぐった後世において新たな発展を望む手仕事が掲載されている。戦争直前の日本の手仕事を語ったものなのだが、同時に悲しいかな戦争によって失われた多くの手仕事の遺書ともなっている。戦争当時本の草稿自体は災禍を逃れて無事だったのだが、ほぼ各ページに配置されている手仕事の小間絵についてはほとんど焼失してしまい担当した芹沢銈介は再度多くの絵を描き直したのだそう。

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小間絵。これを見るだけでも価値がある。

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柳は「伝統は活きたものであって、そこにも創造と発展がなければならない」と書いており、ただ保存したり残しておくのではなく時代とともに変化していくべきものだと説いている。

私がなるほどなと思ったのは次の部分。

それではどんな性質の美しさを一番尊んだらよいのでしょうか。それは結局「健康な美しさ」ということに帰ってきます。どんな性質の美しさも、「健康」ということ以上の強みを有つことは出来ません。なぜかくも「健康さ」が尊いのでしょうか。それは自然が欲している一番素直な正当な状態であるからと答えてよいでありましょう。(p.235)

自然が欲している一番素直な状態、いい基準になりそう。糸井さんもほぼ日のなかで「健康な人に勝てると思わないほうがいい」という話をしていた(というのを以前別記事で書いた)。

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巻末には文書中の手仕事たちが地図に落とし込まれているものと、品物の索引が。読んで記憶していくというよりも、辞書のように時々引っ張りだしてはなるほどと唸るような本棚に忍ばせて置きたくなる一冊。また、冒頭で柳自身が「地方に旅をなさる時が合ったら、この本を鞄の一隅に入れて下さい。貴方がたの旅の良い友達となるでありましょう。」と発しているように旅のお供にも良さそうだ。

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2015年は芹沢銈介生誕120周年だそうで、『柳宗悦と芹沢銈介』というピンポイントな展示会が、静岡市芹沢銈介美術館にて開催されることを知った。会期は5月まで。

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芹沢銈介生誕120年記念展
柳宗悦と芹沢銈介 ―美と暮らしがとけあう世界へ―

会期:2015年1月4日(日)~5月10日(日)
<休館日>毎週月曜日(1/12、4/27、5/4を除く)、1/13、2/12、5/7
会場:静岡市芹沢銈介美術館
時間:9:00〜16:30

 

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