【本】本を読むことで、より愛着が湧く|『OCICA 〜石巻 牡鹿半島 小さな漁村の物語!〜』
ブログにもたびたび登場する、東北の手仕事ブランド「OCICA」が生まれるまでを綴った本を読んだよ。
OCICAは東日本大震災後に、宮城県・牡鹿半島のちいさな漁村で生まれたアクセサリー。漁網の補修糸と鹿の角を使ってつくられている。震災で甚大な被害を受けたこの地域では、それまでしていた仕事は波に奪われなくなってしまっていた。命が第一の緊急支援が一段落すると地域のお母さんたちのなかに生まれてきたのは、「なにかしたい」という欲求だったそう。
しばらくすると、客観的なニーズなどの状況も、一人ひとりの心境も、自分の目から見える世界に関しては確実に変化していった。次に必要なものは「仕事」ではないかと感じた。収入という意味合いもあるが、それよりも、”役割としての仕事”というほうが適切だったように思う。
生きることを肯定するためには、「あなたが必要です」という言葉を並べるだけでは限界がある。何かモノやサービスを差し出して、それを受け取った人が、感謝やよろこび、場合によってはお金で返してくれたとき、初めて、自分の役割が実感できるものだと思う。
そして”役割としての仕事”を次のような観点から模索しはじめた。
- なるべくお金をかけずに始められること
- 材料の仕入れも安定的にたくさん集められる素材であること
- 手仕事のプロジェクトであること
- 内職ではなく土地の人が土地の素材でやるからこそ価値が生まれる仕事であること
- お涙頂戴ではなく買ってくれる人たちにも心から喜んでもらえるモノであること
- 地元のお母さんたちが作業を楽しめること
- そしてその結果として事業として自立し、継続していけるものであること
これらを加味して、試行錯誤を重ねた末に生まれたのがその土地の素材(鹿の角、漁網の補修糸)を使ったアクセサリーだ。かけられた糸は、ドリームキャッチャーを模している。古来より水難のお守りとして使われている鹿角に、悪夢を食べてくれるドリームキャッチャー。津波という悪夢からの復興を祈りながら、いまでも週に2日お母さんたちは作業所へ集まりおしゃべりをしながら誇りを持って制作を行っている。
OCICAは大きな宣伝をしたり、どこかへ売り込みへ行ったりすることなく手にした人の力で少しずつ広まっていったのだそう。取材を申し込まれたときにも、なるべく現場まで出向いてもらいお母さんたちに教わりながら、その場でひとつOCICAを完成させて持ち帰ってもらっている。私もそのひとりだが、体験をするとすっかりOCICAや牧浜のお母さんたちに愛着を抱いて、各地へ戻ってからその体験をまわりに話す。その小さなうねりが巡り巡ってお母さんたちの”役割”を生んでいる気がする。
売り上げからは、ネックレス1個につき1000円、ピアス1個につき2200円がつくり手のお母さんたちのもとへ。そのうちそれぞれ1個につき200円を場を維持していくための、共有財産としてストックしお茶代などに充てているのだという。続けていくことを前提とした設計もとてもいいなと思う。
製本の糸は、OCICAにも使われている漁網の補修糸。赤が映える。
ページを現すノンブルにもOCICAの遊びごころが。対ページには数字も記載あり。
盛岡のKANEIRI STANDARD STOREにも置いてあったよ。