【アート】行ってよかった展示2014 No.1!「カンタと刺し子」@日本民藝館
TwitterだかInstagramかで2ヶ月ぐらい前にゲットしていた情報なのにも関わらずなかなか足が伸びなくて会期終了直前の21日に駆け込みで鑑賞!東北沢にある日本民藝館で行われていた「カンタと刺し子」展へ。
カンタというのは、旧ベンガル地方(現在のインド西ベンガル州とバングラデシュ)でつくられた刺し子。中央に蓮の花を、四隅にペーズリーを入れるのを基本として、動植物や身辺の品々などが生き生きと描かれている。
中央アジアの民族を描いたマンガ『乙嫁語り』のなかで「布支度」についての描写がある。いわく、布支度とは嫁入り修行のひとつ。女の人が結婚をする時には、嫁入り道具として刺繍を施したたくさんの布を持っていく習わしがある。すべての布に刺繍をするので結婚間近でするのでは到底間に合わず、小さいときから少しずつつくっておくものなのだそう。
ふんだんに刺繍の施された布は時に貨幣以上の価値を持つ作り手の社会的地位と帰属を表しその人となりを物語る
特別な1枚は特に念入りに仕上げられ受け継がれるその家独自の文様には気が遠くなるほどの時間と手間とそして想いと祈りが込められている
とはいえその姿には気負ったところは見られない
談笑しながら針を刺し仕事の合間に糸をつむぐ。そうするのが当たり前でごく日常の風景でありつまりは生活である
(余談だけどこのマンガすごくおすすめ。布支度の巻は特にすき)
今回展示されていたのは、婚礼や儀式のときに床に敷かれる念入りに描かれたまるで絵画のような品たち。ポスターだけだとその全体量は見えなかったのだけど、会場に行ってみて驚いた驚いた。あれだけのカンタを間近でみることができたことにも、その保存状態の良さにも、改めてのその刺繍の細かさにも。
モチーフ配置が自由な人、左右きれいな対象をとる几帳面な人、大胆な色づかいをする人、などなど一つひとつに確かに人の面影があって、人の手で、人の頭で、誰かを想って、つくられたのだということが伝わってきてからだに充満した。
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対象とされていたのは東北地方の刺し子で、こちらはもう本当に几帳面!というか日本人すごい!という物たちだった。東北の刺し子については『ほんとうのニッポンに出会う旅』のなかで触れられていた。
カンタと東北の刺し子は鮮やかさやその目的(東北の場合はもともと百姓が着ることを許されていた麻を丈夫に、かつ暖かくするために刺し始めたのが起源といわれている)は違えど、どちらも普通の女性が5〜6歳の頃から”日常の風景、生活”として習いはじめたもの。真似をしてつくることはできても、この積み重ねてきたものたちは超えられないのだろうなあ。本当に行ってよかった展示でした。今回の出品は岩立フォークテキスタイルミュージアムの協力を経て実現したそうで、こっちにも足を運んでみたいな。
日本民藝館には駒場東大前から行くのがおすすめ。東北沢で降りたらごはんを食べるところが全然なかった。駒場東大駅前のおそば屋さんにてかき揚げ天ざる。おそばはコシがあるほうがすきだ。
はじめましての日本民藝館。しびれるぐらいかっこいい建物は柳宗悦によって企画され1936年に開設。そこに所蔵されているのは柳の審美眼により選ばれた古今東西の諸工芸品、約17,000点!品物の説明書きが少ないのは「知識で物を見るのではなく、直感で見ることが何よりも肝要である」という柳宗悦の見識によるものなのだそう。黒い板に朱墨で書かれた展示板にも味があって、あれを書く担当者みたいな人がいるんだろうなと思った。今度は限定公開の旧柳宗悦邸が開館している日に行きたい。
これはたまたまだけど、ちょうどいま読んでいる本。これの発売当時の本(芹沢銈介の合羽刷り装丁!)も展示してあってガラスに釘付けでした。