Serendipity

睡眠と太陽とおいしいごはんがあればそれでしあわせ。ときどき本や映画の話。

【映画】知識欲がむくむくと刺激される!『千年の一滴 だし しょうゆ』※ネタバレ少しあり

いい映像を堪能ほくほく。はるばる東中野まで行った甲斐あり。

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フランス料理の主人公はシェフ。しかし和食は・・・日本列島そのものが料理人だ

ポレポレ東中野で上映中の日仏合作ドキュメンタリー、『千年の一滴 だし しょうゆ』。日本人と自然との関係が、食を切り口に2章に分けて展開されている。

第1章:黄金色に輝くだし

1章で紹介されるのは、「だし」。だしというのは、”とる”ものではなく”ひく”ものである。それはさまざまな素材のよさを”引き出す”ことに由来するのだそう。北海道の昆布漁師、鹿児島の鰹節職人(鰹節は捌いて、煮て、燻して、カビを生やし、晴れた日に太陽のもとにさらすこと4回、半年の時間をかけてつくられる!)、肉食を口にしない禅寺、だしとの対話、成分を分析する科学者、焼き畑をしてしいたけを栽培する農家、など日本列島が持つ豊かな自然と、食にまつわるさまざまな人が登場する。

第2章:日本にしか存在しない菌、麹

目からウロコがぽろぽろと落ちたのは2章で紹介された『しょうゆ』。
日本料理の調味料は、醤油、酒、みりん、味噌。この4つに共通しているのは”麹”という菌の存在だ。この麹というもの、先日ひょんなことから島根県は出雲で日本酒を仕込んだときに大変お世話になったのだけど(改めてブログに書きたい)日本にしか存在しない菌なのだという。それは一体なぜ? 長年研究を進めてきたところひとつの説が浮上してきたのだそう。

麹菌というのは日本人がつくりだしたものではないのか 

今から800年前より酒造りを行ってきた日本。自然界より抽出したさまざまな菌を使って酒を醸造していた。毎年そのなかで美味しいものを選び淘汰していくことでひとつの菌が残る。これが麹菌(アスペルギルス・オリゼ)の原型といわれている。この原型にはもともと外的から身を守るために毒を発するDNAがあった。しかし、長年の酒造を外敵のいない酒蔵で続けてきた結果、毒素のDNAがすっぽり抜け落ちた。さらに突然変異によって、本来胞子に対してひとつの核が、この菌に関しては多いもので10個存在するものに。その結果、菌の保存力が強まり日本中で用いられさまざまな調味料を生み出してきたのではないかというのだ。

いや〜、ロマン!進化なのか退化なのか!
そしてその麹を800年ものあいだ絶やさずに培養してきた種麹屋さん(もやし屋さん)が出てくるのだけどこれがまたなんともかっこよい。代々続いてきたものを、自分の代で絶やさないようにと責任とプレッシャーを背負いながら粛々と命をつないでいく。その姿たるや、まるでヒーローのようだった。いま日本にもやし屋さんは10軒しかないのだそう。

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年が明けて、日本酒を仕込み、醸造文化に触れたと思ったら、パン作りをして発酵文化にも触れて、出雲ではひたすら『夏子の酒』を読みふけり(名作!)、そんなこんなで出会った今回の映画。身にびしびし感じられてとても興味深い一作でした。

 

 仕込みを手伝わせていただいたお酒、2月14日、15日は搾り、瓶詰め、ラベル貼り、そして待望の初呑みです。参加費5000円(交通費別途)で1泊3食、四合瓶3本の日本酒つきという超格安パックにて、参加者募集しております〜


余談ですが。一緒に映画を観た人が「きちんとつくっている蔵本を紹介しているということが日本人には分かるけれど、これを観た外国人に大手が大型タンクでつくるお酒やお醤油もこの映画と同じように丁寧に作られているのかと思わせてしまう危うさもはらんでいるね」とつぶやいたので、なるほどなと思いました。誘導されるがままではなく、取捨選択。一概に大手のつくりが悪いともいえないしね。しかし映る京都の風景は、ド・ベタな日本風景だったのが少し気になりました。その違和感はあるにしても、「へぇ〜!」が満載な映画でした。ポレポレ東中野、2人で行くとペア割りで1100円になるよ!