Serendipity

睡眠と太陽とおいしいごはんがあればそれでしあわせ。ときどき本や映画の話。

【本】まさかうるっとくるとは思わなかった|『檀蜜日記』

やあやあやあ、結局4月は1回もblogを書かないまま通り過ぎていったよ!雨つづきの日々が嘘みたいに快晴つづき、もはや夏!って感じの毎日ですね。

ネットでオススメされていた『檀蜜日記』を読みました。その名のとおり、タレント(でいいの?肩書き)の檀蜜さんがつづった日記をまとめた本。2013年秋から2014年夏までの短い日記がここには収められている。

壇蜜日記

壇蜜日記

 

 読んだ感想は「なんていじらしいんだ、かわいいんだ檀蜜。そして、地味!(愛を込めて)」です。眠ることがだいすきで、休日は外の天気もわからぬほど眠りこけて、熱帯魚を愛し、銭湯に通い、アイスの蓋にしあわせを感じる33歳。なんて地味なんだ。

さすがに「私のステキライフを参考に、みんなもキラキラしてほしいな!信じていれば、夢は叶うよビーハッピー♡」…なんて大ウソは書けませんでした。ウソつくと、まゆ毛ズレるから。(あとがきより)

いきなりあとがきの話へ飛ぶけれど、引用通りキラキラハッピー♡な日記はほとんど出てこない。 出てくるとしても、近所のスーパーに出身地の秋田産さくらんぼが並んでいたとか、近所に銭湯を見つけたとか、そういうこと。でも、そういうちいさなことに気づく感性とそれをハッピーハッピー!と表さずにたおやかなことばで記しているところに確かな知性を感じる。頭のいい人なのだろう。

思えば去年の今頃は、大雪の秋田にいた。カレンダーにもなったので撮影内容もしっかり覚えている。当時は本当に誰も信用できず、休みが欲しくてももらえず、寝不足でむくんだ手足を人前に晒していた。時々その時の擦れた気持ちが夢の中に出てくる。お前それで売れたくせにと言われても、当事者にしか感じられない痛みがあった。それで売れたんじゃない。それをバネにしたんだ。 (2014/2/4 雪より)

それにしても自分を過大評価しない人だなあと思う。立ち位置を常に確認している感じ。確認しすぎなほどに。そんな彼女のそばにいる、軸のぶれなそうなマネージャーの存在が頼もしい。文中表現でのあまりの過小評価具合に苦笑したり、一般的なタレント評に自分がのっかっていることに気づいて恥じたり、まさかのときにうるっとしたり、なかなかに読み応えがある一冊だった。

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余談になるが、この本のなにがよかったってネット公開しなかったところではなかろうか。毎日公開されていたとて、日ごとに読みにいくほどの分量でもないし、公開していたならば日々誹謗中傷にさらされて、ときに炎上していたのではないかなと。そういう意味で静かに1年書き続けて、それを読みたい人だけがお金を出すなり借りるなりして読む/そしてネットとは異なる層にアプローチできる「本」という媒体に残したことは、ひとつの選択としてとても良かったと思う。途中で人の目に触れて文体が変わっていくよりも、無垢な、当時の記録がそのまま出版されたことに、ある意味で文学的価値を感じるのである。そんなわけで最後に私のすきな一文。

何もかもに情や熱を与える太陽の恩恵を受け過ぎて、外にいる私たちは気持ち良さと息苦しさの狭間で体内の水分を蒸発させていた。

 コンパクトながら味のある装丁は、城井文平さん。まだとっても若い方のようです。

 

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