【本】27歳のいま読めてよかった|『肩ごしの恋人』
美人で自由奔放、ほしいものは手に入れないと気が済まない一見わがままなるり子と、クールで自立している萌。27歳のふたりは5歳からの幼なじみ。
結婚、浮気、不倫、離婚、仕事、若いというだけでちやほやされていた20台前半からの脱却などなどおなじく27歳として身に詰まるテーマ満載の恋愛小説。
いつの間にか、才能があって愛嬌もある年下がぐんぐん力を伸ばしていたりいつの間にか、そんな気配のなかった友人が結婚していたりこつこつと仕事をしてきた同世代が少しずつ花開いてきたりそういう時期なんだなあ、27歳っていうのは。でもこの本を読んで、悲観することないなと思った。というより悲観してもいいことないなと。
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ここからはぐっときたもの抜粋。
疑問というのは、メビウスの輪のようなものだから、自身にそれを投げ掛けると、内蔵の中をぐるぐる回って、理性とか欲望とか常識とかプライドとか心とか子宮とか、やっかいなものを経由しながら、頭の中に戻って来る。そうして、その時にはさらに疑問が膨らんでいる。考えてみれば、疑問をどれだけ巡らせても解決したことなんてひとつもなかったような気がする。 (p.31)
本当にそのとおりだなあと思う。やっかいなものを経由。
「結婚すれば幸せになる、その幻想を捨てない限り、女は自分の足で立てないのよ」(p.203)
どきっとする。
周りから優しく、大切に扱われるだけの過去なんてあるはずがない。悪意はいつだってはびこっていて、みんなそれに晒されてきた。完璧な親なんかいない。親だって、四苦八苦しながら生きている。その親も、逃げ場がなくなれば自分もトラウマを背負っていると告白し始めるだろう。結局は責任のなすりあいだ。(p.235)
このあとの文ちゃんとるり子の会話がいい。
「それにね、私は自分が幸せになれないなんてどうしても思えないの。だって私、いつだって幸せになるために一生懸命だもの。頑張ってるもの。そんな私が幸せになれないわけがないじゃない」(p.273)
このセリフがいちばん好き。ここまで言い切られたら「確かに」と思ってしまう。
ドラマのような漫画のようなテンポのいい小説。読み終わると、気がつけば私もるり子に背中を押されている。